キャピタル・ゲインとは – 塚越 至

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キャピタル・ゲインまたはロスは「キャピタル資産」の売買によって生じる損益を指します。このキャピタル資産とは、家屋やボート、自動車、金融資産など個人が保有する資産を意味し、絵画や骨董品なども含みます。日本の教科書では「資本資産」と訳されているようですが、「資本財」とは異なる概念で混乱を来たしますで、ここではキャピタル資産と呼びます。
このキャピタル資産には事業資産である売掛金や在庫は除かれますので、その売買に伴う損益はキャピタル・ゲインあるいはロスには該当しません。
また個人が事業目的のために保有する設備や工場施設などもキャピタル資産の対象から除かれています。この事業目的の資産が除かれることがキャピタル資産の理解を混乱させる一因になっていますが、これには歴史的な背景が存在します。


1937年までは事業目的の資産もキャピタル資産に含まれていました。しかし、事業資産は減価償却が可能であることから、大恐慌下で資産価値が低下したにもかかわらず遊休資産を処分せず引き続き持ち続けてしまう弊害が生じることになりました。その打開策として、1938年の歳入法で事業資産をキャピタル資産から除く措置が取られています。
その後、第二次大戦中に政府は民間企業から生産設備を強制収用しましたが、戦時中の物価高騰で収用価格も高騰し、その結果多額の処分益をもたらして納税負担が上昇することになりました。その救済策として、事業資産の処分益に対しても通常の法人所得税よりも低税率であるキャピタル・ゲイン税率の適用を認めて今日に至っています。
この内国歳入法の条項が1231条であることから、これら処分益に優遇レートが適用される事業資産は「1231条資産」と呼ばれています。このように1231条資産はキャピタル資産ではありませんので、処分損は通常損失として処理されます。
キャピタル資産を転売した際の価格と原価との差額がキャピタル・ゲインあるいはロスで、税制上の優遇措置や制限があることから、米国の納税者にとっては非常に重要な項目になっています。
ゲイン・ロスの算定基準であるキャピタル資産の原価には、アメリカ税制特有のBasis(税務基準額)が適用されています。このBasisはアメリカで課税される際のすべての基準に適用される重要な概念で、取得原価はその範疇に入るひとつに過ぎません。
アメリカ税制では「キャピタル(Capital)」とは既に所得税を支払った後の資金を指し、投資行為とはこの資金を投入することによって所得が生じることを期待して現物財産を取得することを意味します。
転売額が投入資金額(Basis)を上回った際には差額が益として実現し、投入資金分は既に所得税を支払い済みですので、このBasisを上回った未払い分に対して新たに所得税を納めることになります。
このようにBasisはキャピタル投入額で通常は取得原価ですが、このBasisが上下に変動する場合が生じ、正しいBasisを見定めることに細心の注意が必要とされています。誤ってBasisを過大に申告すると納税額が過少で税務当局から追徴を受けることになり、逆に過少であれば余計な所得税を納めることになります。
すべてのキャピタル・ゲインは必ず申告する必要があり、その益に対して所得税が課せられますが、税制上の優遇税率が適用されるのが通常です。
ゲインに対しては、昨年末の連邦議会がそれまでのいわゆるブッシュ減税策を2012年まで延長する法案を通し、引き続き最高税率は15%に、条件次第では零パーセントの適用も可能になっています。
一方、キャピタル・ロスには色々な制限が設けられ、他の所得との自由な相殺が許されていません。
個人が保有するキャピタル資産から生じたロスは、投資目的のために取得したキャピタル資産に対してのみ認められています。したがって、レジャー目的のボートや居住のための家屋を処分した際に転売額がBasisを下回ったことによって生じたロスは、税務上は損として申告することはできません。
キャピタル・ゲインとキャピタル・ロスを同時に抱えた場合はその間での相殺は認められ、相殺後にゲインが残れば所得として申告し、ロスが上回れば年間3千ドル(夫婦合算申告の場合)を限度に他の通常の所得との相殺が認められています。この限度を超えた分は翌年度に繰り越され、同じように3千ドルを限度に相殺できます。
                           (完)