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2010年01月07日 19:40に投稿されたエントリーのページです。他にも多くのトピックエントリーがあります。メインページやアーカイブページをご覧下さい。
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前回述べたように、企業の合併・買収において人事に期待される役割はベネフィット精査にとどまらず、統合後の価値創造戦略を見据えた包括的な役割です。しかし、デュー・ディリジェンスにおけるベネフィット関連の作業は、法務・税務が大きく関わり、多大な作業を必要とする項目に違いありません。実務にはベネフィット、法務、会計の専門家チームが必要ですが、ここでは概要と考え方を述べます。
デュー・ディリジェンスは、合併・買収対象企業のビジネスをあらゆる側面から精査する機会であり、人事関連の精査もその重要な項目となっています。ベネフィットに関する精査は、M&Aが株式買収あるいは合併の形態をとるか、資産買収(営業譲渡)の形態をとるかによって異なります。
前者の場合、従業員と雇用主との関係がそのまま新会社に引き継がれるため、基本的に買収企業あるいは新会社が買収先のベネフィット・プランと資産・債務を自動的に継承する形になります。この場合、デューディリは、制度内容、ベネフィット債務額、将来的なコスト、法規準拠性、制度変更の是非を精査する重要なプロセスとなります。
資産買収の場合は、新会社が買収先事業の継承者になる一部ケースを除き、買収先と従業員の雇用関係が断ち切られます。新会社は従業員の雇用、およびベネフィット・プランの存続、資産・債務の継承に関して選択権を持つことになり、デューディリはその選択に必要な情報を提供する役割を担います。
コストとベネフィット債務の算定
退職年金、ヘルスケア、退職手当、その他ベネフィット制度の維持・変更のコストを正しく把握することで、買い手は買収価格にコストを反映させることができます。
もっとも複雑なのは、対象企業が確定給付型のペンションを持っている場合で、買い手がそのプランを引き継ぐ場合、これまでの拠出額が十分であるかどうかの検討を行う必要があります。年金資産残高が将来の年金支払い債務の現在価値に達していない場合は支払い不十分(アンダー・ファンデッド)で買い手側に支払い義務が発生することになり、逆であればオーバー・ファンデッドとなります。年金のファンディング状況は買い手側のコストと売買価格に影響しますが、年金計算の前提条件によって変わってくるため、買い手は売り手側の前提条件を鵜呑みにせず独自にアクチュアリを使って判断を行う必要があります。
確定給付年金は終生年金の形で支払われることが多く、買収に伴うプラン廃止を行う場合は、保険会社に支払い責務を移管する契約を取り交わすことになります。
法律の準拠
ベネフィットに最も深く関連するのは、従業員退職所得保障法(ERISA法)と内国歳入法(IRC)です。 これら法規は、確定給付型ペンションや確定拠出型ベネフィットである401(k)、プロフィット・シェアリングなどの年金制度のみならず、ヘルスケア、退職手当(Severance)を含むほぼ全てのベネフィットに関与します。違反によるペナルティ、納税漏れ、訴訟などで買い手や新会社が損害を被らないように、買い手は現行プランの準拠性チェックを行う必要があります。統合までに改善が間に合わない場合は買収契約や買収金額に内容を反映させる必要があります。
とくに気をつける必要があるのは、年金や一部のヘルスケアプランの税制適格・非適格の扱いです。適格プランが適格要件を満たしているかどうかを検証せずに買収後に発覚するようなエラーは防ぐ必要があります。また、適格プランにおける高所得従業員の優遇を防ぐために義務付けられる非差別テストでも、テストの基準となるコントロール・グループが買収によって変わることも注意する必要があります。
また退職者医療保険継続を規定するCOBRA(Consolidated Omnibus Budget Reconciliation Act of 1985) 、労組や複数雇用主の年金に関するERISAの規定など、M&Aにおけるベネフィットの扱いに関する法規や条項は数多くありますので、経験豊富な弁護士を使ってリスク分野をもれなく潰していく必要があります。
ベネフィットのデューディリの次のステップとしては、統合に向けて新プランの青写真を描くことになります。非差別ルールなど法律的に問題ない限りにおいて買収先のプランを当面維持することも考えられ、業態が違う会社間のM&Aの場合、別々のベネフィットを保持することがむしろ適切であるケースもあります。しかし管理コストと公平性の観点から、買収先プランの廃止、買い手プランへの移行、さらに新会社における新規プラン立ち上げも考えられます。この場合、従業員構成をもとに、コスト効果と市場競争力を考慮してプラン内容を決めることになります。プランの変更については周到なコミュニケーション・プランを作成し、事前に繰り返し丁寧なコミュニケーションを実施して従業員の不安を取り除くことが大切です。
次回はデュー・ディリジェンスにおける人事のベネフィット以外の役割について言及します。
菅野葉子
Elf Global Associates, Inc.代表
日時: 2010年01月07日 19:40 | パーマリンク
