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2007年05月28日 20:47に投稿されたエントリーのページです。他にも多くのトピックエントリーがあります。メインページやアーカイブページをご覧下さい。
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インターカルチュラル・ビジネスセンター社
社長 渥美 育子
法則 9:バーチャルチームの多用で成果をあげる
日本人の脳内ダイナミックスをグローバルな場に拡大する方法をこれまで様々な角度から説明してきた。その集大成ともいえるのが、どの国で働く人とでも必要ならば自由にバーチャルチームをつくって成果をあげていく「遠距離多文化チーム」づくりのスキルである。この21世紀に必要不可欠な能力を日本人がどのように身につけたらよいかを、これまでに受けた色々な質問に答える形で説明したい。
1.バーチャルチームとは?
個人主義に徹した米国人がチームの重要性を強調しはじめたのは、冷戦体制が崩壊し、グローバル時代がはじまった91年以降のことである。そして90年代半ばにデジタル革命が起き、その後インターネットが普及するとバーチャルチームが自然な形で必要になってきた。初期の段階では‘バーチャル’(virtual)という言葉は紛らわしいので‘遠距離’と言った方がよいという意見もあったが、欧米では‘バーチャル’という言葉は概してすんなりと受け止められてきたように思う。ところが、日本人の中には‘バーチャル’という言葉そのものにひっかかり、今ひとつ納得できないため、先に進めないという人が多くいることに気がついた。辞書を引くと‘仮想の’という訳が出てくるので、本物のチームではないのかと疑ったりして余計に判りにくいのかもしれない。
‘バーチャル’とは、‘現場’の反対、つまり実際の(physical)「場」-現場-を共有しない、という意味である。従って、バーチャルチームとは同じ場所に居ない者どうしがつくるチームのことであり、‘遠距離チーム’といつでも差し支えないし、「場」が二ヶ国以上にわたっていれば‘遠距離多文化チーム’と呼んでもいいはずだ。
しかし、面白い現象が起きている。私の場合も含めてバーチャルチームによる仕事が日常茶飯になると、その結果バーチャル空間でのチームの結びつきが強いリアリティーを帯びるようになり、脳内ダイナミックスが変化し、遠距離チームといった直接的な言い回しよりも新しい時代環境を示唆する‘バーチャル’の方が相応しく感じられるようになってきたのである。バーチャルチームに関して、今日本人にとって大切なのは、日本の企業文化の長所はチームワークにあると主張しているうちに外ではグローバルな「場」におけるバーチャルチームが進展し、日本人がチームの一員にもリーダーにもなりえなくなっているという事実にいち早く気がつくことであろう。
2.バーチャルチームに不可欠なもの
では、バーチャルチームをつくって成果をあげるのに絶対必要な条件とは何であろうか?
このシリーズで取り上げた成功法則の殆ど全てがバーチャルチームづくりに役立つと言えるが、まとめをかねて私が選びたいトップ5は、
(1) 共通語と共通のコミュニケーション手段をもつ
(2) 共通のゴールを含め、共通理解のプラットフォームをもち、それを協力して増やしていく
(3)(実際に会わなくても可能な)信頼の構築方法を知る
(4) 専門知識やノウハウによるヨコの連帯意識が肩書きや権力によるタテの階層意識やコントロールより重要だと考える。
(5) 相手の文化的背景にマッチする動機づけや問題解決の方法を察する能力をもつである。(2)の共通理解のプラットフォームとして<文化の世界地図>を利用できれば、(5)はこれに含まれるので、もう一つ、バランスの取れた世界の見方と関わり方を加えることもできる。
(1)の共通語は多くの場合、正統派の英語(King’s English)でも米語(American)でもない‘Broken English’(意味さえ通じれば文法上の正しさにはあまりこだわらない英語)であるが、これからは北京語を加える必要があるだろう。共通のコミュニケーション手段としては、E-メールの使用やインターネットの利用を考えやすいが、文化圏によって使いなれた手段や重要なメッセージを伝える手段が違うので、あらかじめとりきめをしておかないとチームを作れない。たとえば、ラテンアメリカやアジアのようなMoral Codeの国々やReligious Codeの回教国では大切な交渉は実際に会うか、親しければ電話で話す、あるいは権威ある第三者に伝えてもらうのが効果的で、E-メールでは返事ももらえないだろう。反対にプライバシーが重要視される米国ではきちんとしたE-メールが効果的である。また、米国ではアンサリングマシンにふきこまれたメッセージには返事をするのが常識だが、本土の中国人のようにアンサリングマシンを使わない、あるいは無視する人たちも大勢いる。従って人間関係中心の社会に住む人たちがチームのメンバーに含まれる場合は、最初に一度は会う必要が出てくる。但し、その人たちがグローバルマインドを持っていれば即座にバーチャルチームをつくることが可能になり、そういう相手と出会った時の喜びはひとしおだと言えよう。
(2) の共通理解のプラットフォームとしては、同一企業のメンバー同士のチーム
なら企業文化やビジョンの共有も勿論大切である。それ以外の場合は<文化の世界地図>やグローバルビジネスのルールの共通理解が、企業単位を超えて多様な背景のチームメンバーを結び付ける基盤になる。更に、プロフェッショナリズムを共有できれば、会ったことも無い人たちと互いの信頼のもとにプロジェクトを開始し、最大の成果をあげることも可能になる。新しく登場している“グローバル・スーパースター”たちがチームワークを好み、仕事の達成からくる満足感を強い動機として働くことを思い出してほしい。
(3)は極度に現場主義で、一緒に飲んだり食べたり歌ったりゴルフをしなければ本当の信頼関係は築けないと信じている日本人には頭の切り替えが必要だ。文化のCodeが違えばルールも違うという法則で詳細したように、文化によって信頼関係の築き方が異なるのでそれをまず理解し、プロフェッショナリズムと組み合わせるのがコツである。
(4)もまたタテの関係を重視する日本人にとってはむつかしいかもしれない。日本人はジェンダーや外観、肩書きで相手が自分より上か下かを即座に測り、判定の基準にしているからだ。国にもランクをつけて後進国の人間を一級下のように思う精神構造では、グローバルなバーチャルチームを組んで仕事をするのは困難である。解決方法としては、相手が持つ知識や経験、ノウハウといった能力に注目し、機会を捉えてよい点をほめる訓練をすること。面子や個人の利害、肩書きを超えて相手を出来る限りサポートすること。
バーチャルチームを成功させるコツは、多様な文化的背景を持つメンバーひとりひとりが自分は不可欠な存在だと理解して真剣にコミットするかどうかにかかっている。従って誰に対しても公正なモノの見方や配分、評価や報酬、相手をいらつかせないスピードなどを持つことが持続の決め手となる。こうした価値観はグローバルマインドの主要な構成要素に他ならない。
3.バーチャルチームをはじめるには?
〔セッティング〕
やさしいセッティングで試してみよう。次のような事態が発生したとする。
ある多国籍企業がグローバル市場に投入する新製品を完成。グローバルに使用できる広告のプロトタイプを広告代理店に依頼して作成した。これをASEAN地域の5カ国で使用して製品を売り出すにはこのままで良いか、ローカライゼーションが必要か?もし必要なら具体的にどうすればよいか?
シンガポールオフィスで働くマーケティング担当のAさんがリーダーとなり、マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピンのマーケティング担当者とバーチャルチームをつくる。
〔要件〕
このプロジェクトの要件は、状況から見て、
-なるべく早く
-なるべく少ない予算で
-信頼できる結果を導き出す
ことだ。北米やラテンアメリカ、ヨーロッパ、中東、東アジアなど他の地域(region)でも同じプロジェクトが行われるはずだから、これはグローバルプロジェクトの一貫だと考えてよい。さあ、あなたがAさんなら、どう計画し、実行するだろうか?
〔行動開始〕
ひとつの正しい答えというものはありえないので、Aさんの立場で色々考えてみよう。
〇チームメンバーの選択とリードの仕方
名簿、個人的経験、推薦などの方法を合わせて出来るだけ均一な成果をあげうるメンバーを各国から選ぶ。この地域では個人の自主的なインプットによるプロフェッショナルな仕事ぶりは期待できないかもしれない。父親的にリードし、動機づけ、現場からの知恵を出してもらう形をとることにする。プロジェクトの途中でメンバーが変わることもありうると考えておいた方がよい。
〇ガイドラインの作成
Aさん自身が新製品とグローバル広告について学び、このプロジェクトに関して本社で何らかのガイドラインが既に作られているかどうかをチェックする。シンガポール市場でテストする場合を想定してフォーカスグループについて決定。締切りを決める場合には、各国のメンバーの時間感覚や現地の祝祭日/行事も考慮に入れる。メンバーが強いコミットメントをしてくれるように何らかの権威づけとインセンティブを考えるのも大切である。例えば、「これは本社から来たグローバルプロジェクトで、今年の新製品の成否がかかっている。レポートはメンバーの名前をつけて本社に送られるばかりか、世界の他の地域から上がってくる報告書とともにシニアマネジメントのグローバルマーケティングの実践を支えることになる」といった手紙をメンバーに出す。
〇最初の電話会議
E-メールでガイドラインを送った後、全員を招いて一回目の電話会議を行う。目的は、ガイドラインの内容を肉声で説明し、Q&A。もし全員がコミットすることに決まれば何らかの形で‘開始の儀式’を行うのも良いアイデアである。例えば、メンバーの紹介に続きひとりひとりが「期日を守って協力しあい最高の成果をあげる」といったことを声に出して言うだけでも結果は違ってくる。
〇共有できる情報のダイアグラムを作成し、E-メールで送付。
新製品のサンプル、説明書き、グローバル広告など必要な資料のほかに、全員が同じものを壁に貼ったり、手元において使えるように、全体と個人の仕事の進展が一目でモニターできるスケジュール表や、メンバーの写真入り名簿などをタイミングよくE‐メールで送付する。
〇プロセスマネジメント
ガイドラインに沿って各国で仕事が順調に進んでいるか電話会議で中間報告をし合ったり、問題が発生した時ソリューションを話しあったり、報告書のドラフトが出来たら全員に回覧して標準のフォーマットを決めたりする。こうしたプロセスマネジメントは、各メンバーの仕事を統合していく上で欠かせない。Aさんだけでなく全てのメンバーが互いの努力や優れた点に気づいたら惜しみなく評価し激励しあうようにする。
〇最後のフィードバックとシェアリング
出来上がった報告書に対し、全員がフィードバックを提出、あるいは電話で話し合う。Aさんはプロジェクト終了後の経過報告をすることを全員に約束する。
この間、5人は一度も会っていない。
慣れれば、このようなプロジェクトを3つか4つ同時進行させたり、<文化の世界地図>や前稿で説明した“グローバルナビゲータ(sm)”を利用して世界各国のメンバーと自由にプロジェクトをこなすことができるようになる。会社にとっては、プロジェクトの質と効率の向上に加え、経費の大節減が見込めるので、たとえバーチャルチームビルディングと関連英語のトレーニングを一度は行う必要があっても、長期的に見れば大きなメリットがあると言えるだろう。
4.バーチャルチームについての注意点
全体を通して気をつけたほうが良い点をいくつかあげてみよう。
* バーチャルチームで仕事をする時には、メンバーのいる国々全体を上から眺めおろして自分が全体の流れの障害になっていないか時々チェックする必要がある。ちょうど高速道路で動かなくなった一台の車が多数の車のスムースな流れを止めてしまうように、一人のメンバーの遅れや誤解がプロジェクト全体の流れに支障をきたすことが多いからだ。
* E‐メールによるコミュニケーションが多いので、はっきりしない点、おかしいと思う点は必ず早急に確認すること。
* リーダーは全員の歩調を合わせるため、必要に応じてプライオリティリストをメンバーに送ること。(例えば、「今週の最優先リスト」)
* 旅行や休暇をとる際には前もって必ず全員に知らせること。
* 問題が起きた時には、人を非難したり自己弁明をするより、状況を分析し、事実に基いてすばやく解決をはかること。
バーチャルチームとは、一口に言えば時空を飛び越えてプロの仕事師の集団を作ることだ。
以上
日時: 2007年05月28日 20:47 | パーマリンク
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