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2007年05月27日 12:05に投稿されたエントリーのページです。他にも多くのトピックエントリーがあります。メインページやアーカイブページをご覧下さい。
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インターカルチュラル・ビジネスセンター社
社長 渥美 育子
法則 8:スピード>ディテール
グローバル経営に欠くことができない要素にスピードがある。スピード>ディテールとは、ディテール(詳細さ)をある程度犠牲にしてもスピードをとれということであり、ディテールにこだわる伝統を持ち、モノづくりに必要な細部へのこだわりをヒトづくりや経営戦略にもあてはめがちな日本人に特に注目をしてほしい法則である。勿論、もしスピードとディテールの両方を兼ね備えることができれば、その人あるいはその企業は“達人の域”にあると言えるだろう。IBMの元会長ルイス・ガースナーは確信を持って次のような経営理念を述べている。
「ビジネスは勝つことを目指した競争であり、実行するには速いスピードと効果的にこなせるだけの技量が問題になる。しかも一つの組織として統一的に明快に前進しなければならない。」(日経新聞 2002年11月29日)
IBMアジア太平洋地域担当のある重役とアポイントを取ったところ、2回目のミーティングの前に大きな組織変更が起き、プロジェクトがなくなるという事態が起きた。IBMの過酷なまでの“創造のための破壊”と“変革”はガスナーのようなグローバルリーダーが持つ理念に基づいているに違いない。 それに対して、現在日本企業への評価には残念ながら“遅い”という批判がつきまとう。日本企業で各国の現地リーダー候補のためにグローバルセミナーを行うと、本社が今なお多国籍企業のモデルからぬけ出せず、重要な決定はすべて本社中心で、現地法人の能力が活かされていないことにたいする不満や怒りが、爆発寸前の状態でくすぶっているのがよくわかる。 スピードとは変革しながら前進する力である。潜在能力を持つ現地社員たちが日本の本社に求めているのは、
(a)地球規模の(自分の国まで届くという意味)組織改革と
(b)世界共通のトレーニング
であることが判らないのだろうか。これらによって一刻も早く本社も現地のオペレーションもグローバル企業に変身してほしいと願っているのだ。 では、単純明快なゴールを設定して、スピードをあげて実行するために役立つ6つのキーポイントをここに挙げてみよう。組織の変革と個人の変身に必要な各6つの要素を獲得できるプランをたてれば、最も効果的にグローバル企業に変わることができる。
(1) 多国籍企業モデルからグローバル企業モデルへ
次の図を見ていただきたい。全体的な“スピード経営”を本当に目指したいのなら、この根本的なモデルチェンジが何よりも必要なのだと、本社のトップ、中間幹部をはじめ、全世界の社員がよく納得しなければならない。そして個人レベルでは、グローバルパースペクティブの視点を内在できるような訓練をして、メタ認知能力を身につけることがスピードアップにもっとも効果的である。その理由は、グローバルビジネスのおそらく80%以上が心眼で視る世界市場の景色を拠り所としているからだ。先がよく視え、全体がよく視えれば当然スピードが増す。
“スピード経営”と言えば、国内の財閥企業(Chae’bo’ls)が崩壊する中でサムスングループのCEO李健煕(イ・ゴン・ヒ)はどのようにしてグループを世界一流のグローバル企業に変身させることが出来たのか。キム・ソンホン、ウ・インホ著『サムスン高速成長の軌跡』(邦訳、ソフトバンクパブリッシング、2004年)によると、まず旧体制の病状の徹底的自覚、そして日本人技術顧問団の報告書を治療方法の指針として「不良製品の火刑式」のような過去と訣別するドラマチックなパフォーマンス、「7・4制」(7時から4時まで就業というワーキングパターンの変革)、「グローバル ベンチマーク」のような世界の“良いとこ取り”による製品開発、“質の経営”、“複合化戦略”、“改革教本の作成”、“テクノMBA制度”などあらゆる手段を駆使してこのモデルチェンジを実行したのである。結果、新経営宣言をした1993年からIMFの韓国への介入時期を含めた10年間に、グループの税引き前利益は66倍に、株式時価総額は21倍に成長したという。 私がもう一つ注目したのは、イ・ゴン・ヒが実際に働くときの“常軌を逸した”ともいえる姿勢である。彼は寝巻きのような服を着たまま自宅近くの家屋で執務をとるのだが、何時間も食事を忘れてじっと考え込むかと思えば、突然全役員をドイツのフランクフルトのような異国に呼び寄せて何時間も討論を重ねたり、大声で叱咤したりする。評伝は、“未来を予見する天才”“常に世界ナンバーワンを目指す全方型のリーダー”と述べているが、彼こそ、グローバルに世界を見下ろす視点を内在し、メタ認知力を発揮するグローバルリーダーのロールモデルに他ならない。また彼は日本留学中に孤独で映画ばかりを執拗に見続けた結果、“Multi-cultural Lens”を通して物事を視ることが出来るようになった――つまり、画面を見、ストーリーを追いながらも監督や裏方さんたちの仕事ぶりや生き様も同時に透視できるようになった――と告白しているのもまことに興味深い。
(2) ターゲット国/地域代表連合によるグローバルマスタープランの作成を実行
サムスングループの場合は強烈なグローバルリーダーによる徹底的なトップダウンで成功したが、企業のビジョン、ゴール、戦略、実行の時期にいたるまですべてが本社の幹部によって決められるのでは現地のリーダーは育たない。 本社が中心になりながら国連のようにターゲット国(例えば中国)や主要地域(北米、中東などの地域)のトップを招いてグローバルチームでマスタープランを作成し、状況の変化に応じて、彼らのインプットを参考に軌道修正をしながら、実践をしていく形が望ましい。
(3) バーチャルチームによる多文化間プロジェクトの創造、認可、サポートシステム
10月25日の日経新聞に次のような記事が掲載された。
「ワイヤレス・ハンズフリーアダプター」。設計から生産まで手掛けたのは“バーチャル多国籍企業”だ。運営の中心は金型設計製造のオーテック(大阪)。国内外の6万メーカーが登録する受発注情報サイト「ものづくりタウン21」を構築し、案件ごとに得意企業に白羽の矢を立てる。アダプターは同社など内外八社で製品化した。オーテックの売り上げは5年で約20億円に倍増。うち6割はこの「仮想企業連合」で稼ぎ出す。案件に合わせ連合の形は変幻自在。
多国籍企業モデルからグローバル企業モデルへ移行し、社員が世界市場のプレーヤーに変身すると、このようなバーチャル・プロジェクトを一気に加速することができる。ビジネスは無限大。本社はコントロールタワーの役割を果たせばよい。これからはバーチャルチームビルディングを世界共通トレーニングに入れる必要が出てくる。これまで紹介してきた“Cultural Motivators(sm)”や“deMotivators(sm)”(月報 2005年5月号)など、多文化間の動機づけツールが大いに役立つと予測できる。
(4) グローバルコミュニケーションの活性化
日本人や日本企業が“遅い”と言われる理由の一つは、
(a)日本語の壁に加えて
(b)情報を出すことへの極端な恐れ、
(c)説明べたと
(d)英語べたが合わさって、クロスカルチュラルコミュニケーションが信じられないほど貧しいことだ。
次のようなケースがしばしば起きると、日本人のコミュニケーション能力の無さがグローバルプロジェクトを効率よく実施する上で障害になってしまう。
[事例]
多国籍企業A社の米国におけるマーケティングチームは、新製品をグローバル市場に送り出すにあたって従来の国別、地域別マーケティングを統合して、グローバルマーケティングを行う計画を立てた。ヨーロッパ主要国のマーケティング担当者とはジョイントでうまく仕事が進んだ。ついで日本でも同様の目標を達成しようと、チームは次のようなe-メールを日本の担当者に送った。
(a) 計画の概要
(b) 北米、ヨーロッパでの導入
(c) 日本で実践したいこと
(d) 日本のビジネス環境でこの計画がそのまま受け入れられるか。ローカライゼーションが必要か。
北米やヨーロッパのやり方を決してアジアに押し付けるのではなく、むしろ日本市場に受け入れられるよう、ローカライゼーションの手伝いをしたいと、やさしい英単語を使って明確に述べたつもりだった。しかし、長い沈黙の後(a)について質問が2、3きただけで、解答は得られなかった。日本では新製品のマーケティングがどう計画され、実行されているのか―――結局、何も判らないままタイミングを失い、このグローバルプロジェクトはグローバルになる前に打ち切りとなった。
[解説]
各社員がもし、プロフェッショナルとして自分の分野の状況をグローバルに把握し、知識を常に蓄積していれば、このような問い合わせには日本を代表して30分で解答できるはずである。英語で表現できなければ、図をつかえば良い。
異文化間のコミュニケーションに関しては、もう一人の優れたグローバルリーダーであるルノー/日産のCEOカルロス・ゴーンがよいモデルである。現地語(日本語)があまり上手でなくても、はっきりとしたメッセージを持ち、それを大勢の関係者と共有する努力を続ければ、“コミュニケーションの達人”と言われるようになるのだ。彼はグローバルリーダーとしてはごく自然なこと、しかし、ほとんどの日本人社長が行わなかったことを次々に実行していった。日本にいる社員の一人一人との、e-メールホットラインの開設とインタビューによる対話(特に否定的意見を聞きだす)。“コミットメント”のような変革のためのキーワードの定義をくりかえし教え込み、全社員の頭に刻み込む方法。自分の行動の目的や実行プランをリアルタイムでマスコミを通して全日本人世界に知らせていく。達成できなければ辞職するという決意の公開。
シンガポールで日本人社員のグローバル意識を知るために半日のオープンセッションを行ったところ、「何人の人がカルロス・ゴーンになれると思っているのか。」と聞かれて、そのように心を閉ざしている人がまだいるのかと言葉を失った。カルロス・ゴーンを増やしたいと言っているのではない。現地語(あるいは英語)が充分にしゃべれなくても現地の人たちから“コミュニケーションの達人”といわれる事実。ここから日本人に最も必要なクロスカルチュラルコミュニケーションの極意を学べるのではないかと言っているのだ。
(5) 最適化によるマネジメントとグローバルスタンダードセッティングの組み合わせ
グローバルマネジメントの公式の一つは、スタンダードとダイバーシティの最適化、つまり、“多様性を最大限に生かしながらルールの一元化をはかっていく”ということだろう。これに日本企業が勝つために何としても必要な、グローバルスタンダード(あるいはアジアンスタンダード)セッターになる公式を加える、という意味である。 経営のスピードを上げるには
(a)全社員が共有できるプラットフォームを増やす
(b)最適化によるルールの一元化、
(c)取り組みにグローバルレベル、ローカルレベルで優先順位をつけて実行する、
のが望ましい。(5)はその際リストのトップになる項目の一つであり、共通理解のプラットフォームに加えるとともに、“世界共通トレーニング”にも組み込むとよい。
(6)の相関的評価に関しては、グローバル時代の新しい評価方法として非常に重要なので今後独立した法則として考察したい。
以上
日時: 2007年05月27日 12:05 | パーマリンク
