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2007年05月19日 14:57に投稿されたエントリーのページです。他にも多くのトピックエントリーがあります。メインページやアーカイブページをご覧下さい。
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インターカルチュラル・ビジネスセンター社 社長の渥美 育子氏より、『日本企業のためのグローバルビジネス成功法則』というテーマでご寄稿いただけることとなりました。今月号よりほぼ1 年半にわたり、掲載いたします。
日本企業のためのグローバルビジネス成功法則
はじめに
世界トップレベルの“モノづくり技術”や、根回しに代表される意見調整、チームワークとコンセンサスを基盤とした和の経営―― こうした優れた資質を多く持ちながら、日本企業がいまひとつグローバル市場で突出できないのはなぜだろうか。プラザ合意後の超円高による経済破綻だけが原因なのか。日本人がグローバルリーダーになりにくいのは、言語の壁だけがその理由だろうか。
<東アジア自由経済圏>の構築を目指すこれからの時代に、70年代80年代のような国際的な活躍を、新しい時代に相応しい、よりしっかりとした姿勢と足取りで取り戻すためには何をすればいいのか。
今、私は、米国ニュージャージー州の大西洋を見下ろす丘を拠点に、2ヵ月米国、1ヵ月半アジア諸国という生活を送っている。クロスカルチュラルトレーニングを米国で出発させ、欧米企業を相手にグローバルビジネスのあり方を追及して20年が経過した。日本企業がトレーニングの対象だったことも多い。いわば、日系企業のビジネスの仕方や日本人の態度を地球の反対側や上空から眺めるチャンスに恵まれてきた。
これから1年半にわたって、こうした経験に基づき、日本企業がどうしたらハンディキャップを克服して、グローバルな実力を着実に身に付けられるか、私が気付いた点や具体的な方法を提言したい。
法則1:“プロの姿勢”を身に付ける
「道」(Taoism)の精神という中国大陸発、東アジアの遺産にのっとって、まず、正しい姿勢(Stance)を身に付けることから始めたい。
ゴルフやスキー、ダンスなどを学ぶとき、いち早く上達するためには「型」と呼ばれる基本を身に付けるのが最重要だということは、日本人はどの国の人たちよりもよく知っているはずである。ところが「基本」がはっきりしないうちに、多くのゼネラリストが海外ビジネスに乗り出したために、数限りない問題を引き起こしてしまった。
インターナショナルとグローバル
最も大切なのは、“Doing Business Internationally” と ”Doing Business Globally”では、姿勢や方法、背後にある哲学が、天と地ほども違うと理解することである。現在、おそらく95%以上の人が、海外でのビジネスを国内ビジネスの国際版、ないしはその延長線上に捉えているのではないだろうか。これは前者、Internationallyにあてはまると言える。後者、Globallyは世界発の発想を必要とし、日本はその中で重要な一部という考えに基づいている。というと、「自分はシンガポールに派遣されただけで、グローバルな仕事をする必要もチャンスもない」と反論する人が多く出てくると思われるが、そういう人こそグローバルな姿勢が必要である。シンガポールで最大の成果をあげるには、グローバルなものの見方が大いに役に立つからだ。
では世界発の発想に切り替えるにはどうしたらいいのだろうか。次の四つの条件をあげたい。
条件1:世界(市場)全体を見下ろす“グローバルな視点”(Global Perspective)を内在化する.
条件2:日本文化のレンズを外してものを見る。また、ほかの文化のレンズをはめても
のが見えるよう視点を自由に切り替える訓練をする。(Wearing a multicultural
lense.)
条件3:書き込み自由な絶対軸を心の中に設定する。空間としては世界全体(worldwide)、時間としては中国の歴史を考慮して5000年を、それぞれX軸、Y軸に取るとよい。
条件4:<文化の世界地図>、つまり世界の多様な人々の“心のソフトウェア*”の見取り
図を把握する。
*註:文化のインデックスを作成したGeert Hofstede,Ph.Dのことば。
条件1:“グローバルな視点”が発揮する効果
どれだけのものが見えるかが、その人の理解力や判断力を活性化させたり、又その逆にもなることに誰も異論はないだろう。もちろん“見える”とは、肉眼と心眼の双方による。
もし“グローバルな視点”を禅の心眼のように内に持つことが出来れば、信じがたいほどの効果が現れる。いくつかあげてみよう。
• 世界を一望の下に見下ろすと、あまりにも悲惨なことや素晴らしいこと、信じがたいことが刻々と起きていることが分かり、圧倒され、傲慢さなどは吹っ飛んでしまう。ビジネスのほかに重要なことがたくさんあることも分かり、謙虚になる。真のグローバルリーダーに傲慢な人がほとんどいないという事実は、グローバルな姿勢を取る最大のメリットだろう。
• メガトレンドが分かって方向性を見定め、大きな計画が立てやすくなる。自社の製品、サービスにとって成長率の高い市場、挑戦すべき市場はどこにあるか。どこで安い労働力が手に入るか。どこにどういう研究所が必要か。どこに拠点を置けば物流その他のロジステックが最適化できるかなど、全体を見据えることが出来るので、戦略的になりうる。
• 行動を起こすのに適切なスピードが理解できる。すべてを速く実行に移す必要はないが、スピード経営を標榜する韓国のサムスンのように、グローバル企業はスピードで勝負する。グローバルな姿勢でビジネスをしている人は仕事が速い。特に競合会社がどこでどういう動きをしているかがよく分かるので、スピードを上げざるを得なくなる。
• 何が重要で何が取るに足らないかが分かる。従って、重要なことに拘り、どうでもいいことには寛容になりうる。
これらは取りも直さず、望ましい上役、リーダーの要件にほかならない。グローバルリーダーの手法を身に付けると、理想的なリーダーになりうる。これに関連して、IBC社のセミナーの出席者から聞いた以下の実例を御紹介しよう。
[事例]
ある日系製造業のシンガポールにあるアジア拠点で働くAさんは、欧米で12年働いた経験のある新しい上役が赴任して以来、喜びを隠せない。前のマネジングディレクターは何事も日本の本社を中心に考える人で、現地のすべてを日本と比較して見ていた。現地の従業員が意見を出しても押さえつけられるので、皆諦めて黙っていることが多かった。新しい上司はASEANでのビジネスを計画するに当たって、欧米、日本とは違うモデルを作ろうと、部下の経験を尊重し、意見もよく聞いてくれた。Aさんは他の地域についてはほとんど知識がなかったのに気がつき、もっとグローバルな視点に立って勉強しなければと思った。
では、“グローバルな視点”を身につけるには、どうしたらいいか。日産の社長、カルロス・ゴーン氏のように、ヨーロッパ、ラテンアメリカ、北米、アジアと世界の主要地域をすべて実体験することが理想的である。しかし、手っ取り早くというなら、バーチャルジェットコースターに乗って、事例を駆使した世界発見の旅を体験することと、禅の瞑想との組み合わせが効果的である。
条件2:日本文化のレンズをはずす
ある米国企業で、クロスカルチュラルトレーニングを行っていたとき、当時の通産省出身の日本人参加者から「そんなことを言って日本人として恥ずかしくないのですか」と詰問され、もう一人の日本人参加者からは異文化摩擦のどのケースに対しても「これは個人の差です」と一蹴され、梃子摺ったことがあった。母国に長年住み続けていると、自分がその国のレンズを通して世の中を見ていることに気づかない。まず、世界中の人々がそれぞれ異なる文化のレンズをはめてビジネスを行っていることを理解する。そして、自分のレンズの中身は何なのかを自問する。
なぜ自国の文化のレンズを通さないで世界を見る眼が、グローバルビジネスの実践に不可欠なのか。日本文化のレンズが付着してしまっている人は――
• 常に日本文化を尺度にして異なる文化的背景を持つ人を判定してしまうので、欠点ばかりが見え、現地人が持つ良さをありのままに評価できない。結局は現地人のやる気をなくさせてしまう。つまり、文化摩擦製造人間になってしまう。(こういう人が現地のリーダーを早く育てたいと考えているから矛盾する)
• 文化のコードが違う国に行っても、まるで日本の地続きであるかのようにビジネスを行うので、その国の法律や戒律に抵触し大問題を引き起こす確立が高い
• 日本文化の特性のために、世界の現実の解釈が日本的屈折を起こしてしまうのに気づかない。
屈折した解釈は、もちろん日本人だけの問題ではない。しかし、条件1と2、つまり日本文化のレンズをはずして世界全体を見下ろす“プロの姿勢”が身についていないために、国家の経済や産業の舵取りがうまく出来なくなったとなればこれは一大事であろう。日本の死活問題をひき起こした二つの例をあげてみよう。
• 日本は1985年9月のプラザ合意後、予期しないほどの円高に見舞われ、輸出の息の根を止められたばかりか、ドルで購入した海外資産の価値は2/3に目減りしてしまった。吉川元忠、リチャード・A・ヴェルナーのコンビはこれを米国の“日本潰し”政策に嵌められた結果だと分析している。見事な分析ではあるが、80年代に出発した金融自由化の流れを日本人が上空からもっとよくモニターしていたら、円が基軸通貨でない以上、ドルだけに投資すれば米国の政策に操られる危険性は当然あり、海外投資は異なる経済圏に分散したほうがいいという単純なことを理解できたかもしれない。
• 国内でバブル経済がはじけ、平成リセッションに入った1991年、世界ではソ連邦の崩壊で冷戦が終了し、グローバライゼーションが始まった。日本人はこの重要なメガトレンドを捉え損ねた。特に1995年にWTOの協定の一部としてTBT協定**が締結され、各国の規格を国際規格に統一せざるをえなくなったという、日本の製造業にとって最も重要な問題を衝撃的に捉えることが出来なかった。
**註:Agreement on Technical Barriers to Trade
今後ますます世界発の視点で網を張り、重要な情報をいち早く捉え、戦略に生かす必要性が増えていく。日本のリーダーがグローバルリーダーになる必然性はここにある。もし、社員ひとりひとりがグローバルな姿勢と発想で仕事をするようになれば、最大の結果を最も早いスピードで出しうるようになる。
マルチカルチュラルレンズを通して見えるもの
自国の文化のレンズを自由にはずせるようになると、相手の文化のレンズを掛けることが可能になり、俄然面白くなる。IBC社では、世界中の民族の文化のレンズを掛けることが出来るように“Cultural Motivators(sm)”と“Cultural deMotivators(sm)”というツールを作成した。詳しくは、マルチカルチュラルコミュニケーションの法則の稿に譲るが、マルチカルチュラルレンズを通して見えるようになるのは、(a) 世界の多様な人々の“心のソフトウェア”が織り成す模様であり、(b) 相手と自分の考え方や価値観の類似点と相違点であり、(c)最終的には自己の、そして自国の文化のアイデンティティである。
ここに、娘が10歳のときに、私の会社の企画会議が終わるのを待ちながら描いたイラストがある。マルチカルチュラルレンズをはめるとはどういうことかを表しているように見える。あるいは、男性的見方と女性的見方を合わせ持つのがよいと示唆しているのかも知れない。
世界発の発想をするための四つの条件のうち、“グローバルな視点”に動きと方向性を加えると、自作自演のカーナビシステムに似ていることが分かる。これが“Think Globally, ActLocally”と言われる姿勢で、グローバルビジネスの基本である。マルチカルチュラルレンズや次回で説明する絶対の空間と時間軸、<文化の世界地図>などはナビゲーターの性能を最大限にする新しいツールに他ならない。
渥美 育子(在米、名古屋出身) iatsumi@ib-c.com
1968年
青山学院大学大学院修了
ブリティッシュコロンビア大学留学
1975年
アイオア大学国際創作課客員
1976年
青山学院大学助教授
1977年
女性誌『フェミニスト』創刊
1980~81年
ハーバード大学客員研究員
1983年
インターカルチュラル・ビジネスセンター(IBC)社をボストン郊外に設立
2003年
マルチカルチュラル・プレイングフィールド(MPF)社を設立
現在 IBC グループ社長、MPF 社会長
日時: 2007年05月19日 14:57 | パーマリンク
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