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2007年05月24日 13:26に投稿されたエントリーのページです。他にも多くのトピックエントリーがあります。メインページやアーカイブページをご覧下さい。
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インターカルチュラル・ビジネスセンター社
社長 渥美 育子
法則 6:マルチカルチュラルレンズをはめる
これは人間関係やコミュニケーションの基本中の基本でありながら、もっとも気づかれずにいる極めて重要な法則である。特に日本人の場合、(a)各々のレンズは異なってもほとんど全員が日本文化という厚いレンズを通して世界を見ているし、(b)理解のパターンが心情的である(‘お気持ちはよく判ります’、‘お察しします’)ため、この法則を本当に理解し実行するには、二重の努力を強いられる。“マルチカルチュラルレンズをはめる”とは、異なる価値観からなるモノの見方を共有し接点を探り、自分中心の見方を修正し、新しい理解、つまり、高次元(メタ)の理解に辿り着く過程を自分の技術にするということである。従って、キリスト教徒が回教徒のレンズをはめて世界を視るとか、日本人が韓国人、中国人のレンズをはめて日本人を視るというケースを考えて欲しい。この法則と法則1の“グローバルな視点”を内在させる、が合体すると劇的なパラダイムシフトが起こりうる。
ここで、シングルレンズの人とマルチカルチュラルレンズの人を比べてみよう。
これほどプラス面が多いのなら、全力を尽くしてマルチカルチュラルにモノが見えるよう、トレーニングをすべきではないだろうか?文化のレンズの問題は、異文化コミュニケーションの次元を超えた人間教育の基盤であり、日本人、あるいはシングルレンズの人達が多い民族の、世界におけるプレゼンスの問題である。
では具体的に何が障害となって多文化的な視点を獲得しにくいのか、解決方法はあるのか、考えてみよう。主な障害の原因として、
(1) シングルレンズそのもの
(2) グローバルリーダーの不足
(3) 効果的なツールの不足
を挙げることができる。
(1)に関して20年の経験から言えることは、最もトレーニングが必要な人がシングルレンズ故に最もその必要を感じていないという矛盾である。解決方法としては、子供の時からマルチカルチュラル、グローバル教育を施すこと、マルチカルチュラルレンズの必要性を法則化して、企業が新入社員教育や海外赴任研修に半強制的に組み入れることしかないのではないか。(というわけで2003年末にMPFという子供のグローバル教育の会社を国際パートナーシップの形で創設した。)
(2)については、あちこちの国で意外な発見をした。それは、企業のリーダーたちの本音が、社員-特に工場労働者-にあまり目覚めて欲しくないということであった。しかし、そういうリーダーはグローバルリーダーではない。まだ数は少ないが、グローバルリーダーと言われる人達は、企業全体のグローバル度を高めることが世界市場で成功する要因に他ならないと理解している。また、もしグローバルな視野とマルチカルチュラルな発想を持つ社員が増えることが不満の表明を増し問題を複雑にするとしたら、それは逆に企業の方を変革する必要があることにも気づいている。従って、グローバルリーダー(そして人事担当者)を増やすことが先決だ。その方法としては、異文化コミュニケーションという名の箱庭的トレーニングと、世界市場での成功を目指す本格的なグローバルトレーニングとをはっきり区別し、後者を企業全体の研修として組織的に導入していくことが必要だろう。
“Cultural Motivators (sm)”と“deMotivators (sm)”
(3)についてIBC社では、マルチカルチュラルレンズを最も要領よく身につける手助けとなるいくつかのツールを作成した。既に、法則3.<文化の世界地図>を共有する、で述べた世界の主要民族についての“Cultural Motivators(sm)”とその関連図である。90年代前半、米国Fortuneトップ100に入る巨大多国籍企業の重役とアポイントメントを取り、直接売り込むというマーケティング方式を取っていた時、初対面の重役を20分で説得するツールが欲しいと切実に願ったのが“Motivators(sm)”を考案する直接のきっかけとなった。その後、新しいインストラクターを次々に養成する手段としても、異なる国に本拠を置く顧客企業の要求に基づき、短時間に高品質のセミナーをデザインするにも、このツールは<文化の世界地図>と共に測り知れないほど役に立った。
“Cultural Motivators(sm)”とは、現地の人達を動機づける文化的要因で、“demotivation(sm)”とは逆に現地の人達ががっかりしたり、反発したり腹を立てたりする文化的要因である。
「シンガポール人とはどういう人達だろう」と問う代わりに「何がシンガポール人をやる気にさせるか?」と問うことでステレオタイプ化を回避した。作成にあたっては、現地出身のインストラクターや現地で長年ビジネスをしている人達がチームを作り、各トップ10~15の要因を選択、それにキーポイントをつけた。出てきたのは、現地人の“心のソフトウエア”のエッセンスとも言うべきリストである。これを4年以上かけて50ヶ国の主要民族について作っていった。
シンガポール人を理解する方法
例えば、日本からシンガポールに赴任した人がシンガポール人を理解したいというケースを考えてみよう。
[事例]
村瀬さんは日系多国籍企業の本社で20年近く仕事をした後、アジアパシフィックオペレーションのマネジメントディレクターとしてシンガポールに赴任することになった。丁度先任者の帰国と村瀬さんの着任が重なって、現地の日本人社員達はチャンギ空港で万歳三唱をして迎えてくれた。
しかし村瀬さんがすぐに気づいたのは、シンガポール人が会社への忠実さに欠けること、少しでもよい条件があればすぐに他社に移ってしまうことである。また、元政府の官僚であった人達は難しい状況に直面すると部下に委譲したり諦めてしまって、とことん頑張って成果を出す態度に欠けるようにも見受けられた。村瀬さんは何か現地の経営に活を入れるヒントはないものかと探している。
[解説]
村瀬さんが現地で効力を発揮するアイデアを得るには、まず、日本文化のレンズを取り払い、シンガポール人をグローバルな視点から捉えることが重要である。次のような方法が考えられる。
*世界発のモードに切り替え、3つのコードの特徴を学び、アジアは主としてMoral Code、その中では旧英国植民地であるシンガポールはLegal Code色を帯びていること、シンガポールがReligious Codeの国々(マレーシア、インドネシア、ブルナイ)に囲まれていることを確認する。
*次に<文化の世界地図>のアジア太平洋地域に注目。“Cultural Motivators(sm)”と組み合わせて、日本人とシンガポール人がどれくらいの文化を共有しているか、いないかをおよそのところ理解する。
―北部東アジアの儒教文化圏に属する本土中国人、香港、台湾の中国人と異なり、ASEAN文化圏に属するシンガポール人は日本人との文化の共通項が非常に少ない。
―商習慣や労働倫理、モノ造りに多大の影響力を持つ日本固有の文化的要因は勿論シンガポール人とは無関係である。
日本固有の要因とは、組織への強い忠誠心とか、モノに魂を吹き込み得るという神道の精神に他ならない。
―従って、村瀬さんは赴任国でないものねだりをしないようにする必要がある。
―ここで、日本人とシンガポール人にとっての“Motivators(sm)”を比較してみよう。
両者の間に波長が同じでシンクロナイゼーションを起こすような文化的要因は殆どない。
―次に村瀬さんは本土、香港、台湾の中国人にとっての“Motivators”とシンガポール人のそれを比較して共通点と相違点を認識することでシンガポール人の理解を一層深めることが出来る。更に、ASEANの他の国の人達の“Motivators(sm)”と比較して、 シンガポール人のユニークさを感じることも出来る。
―日本文化のシングルレンズからマルチカルチュラルレンズへ、二国間のクロスカルチュラルな理解からグローバルな視点による現地の理解へ―こうしたものの見方のシフトに加えて村瀬さんにはもう一つの変化が必要である。この稿では取り上げないが<文化の世界地図>の構成要素の中に時間軸に沿った“主要国の伝統の輪切り図”があり、一目で戦争や侵略の歴史が判るようになっている。村瀬さんはかって日本軍が侵略した国に赴任したのだ。日本人による万歳三唱が現地人の感受性をどのようにさかなでするかにもっと敏感になるべきである。それが、マルチカルチュラルレンズをはめるという意味である。
―結論として村瀬さんは、シンガポール人の忠誠心の無さを非難するのをやめ、“Motivators(sm)”の1から6までをにらんで新しい給与体系をつくる決心をする。そして、導入後の状態をモニターし、報告書を本社に送って将来の改革のヒントを提供する。また、ASEAN諸国の“Motivators(sm)”を比較検討し、バーチャルチームを作って成果をあげる為のビジネスモデルを工夫することになる。その時彼は世界のどの国に赴任しようとも“Global Navigators(sm)”とも言うべきツールがあれば、時間を無駄にすることなくクリエィティブに現地と本社に貢献できるという自信を持つことが出来るだろう。
以上
日時: 2007年05月24日 13:26 | パーマリンク
