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2008年01月18日 11:56に投稿されたエントリーのページです。他にも多くのトピックエントリーがあります。メインページやアーカイブページをご覧下さい。
« 紐育(ニューヨーク)と大阪 - 廣川 謙一 | メイン国際会計基準への転換 - 低価法とは? (塚越 至)
今回は国際会計基準に準拠して本年4月から始まる会計年度に強制的に適用されることになっている棚卸資産(在庫)の評価方法である「低価法」を説明してみよう。
1992年にミス日本に選出されたこともある新進の公認会計士松尾絹代さんがしばらく前にこれをネット上で解説していた。松尾さんは、その年のミス日本のグランプリは現タレントの藤原紀香に譲ったものの、工学部船舶海洋工学を専攻する東大生として話題になった女性だ。卒業後はフリーのアナウンサーとしてテレビに出演していたが、イタリアの高級ブランドであるブルガリの日本法人に就職したことをきっかけに公認会計士を目指すことに転換し、1999年公認会計士2次試験に合格、太田昭和監査法人(現、新日本監査法人)に入所。2003年に公認会計士に登録されている。
こういう美人の説明だと、居眠りも出ないのであろうが、この棚卸資産の低価法適用は些かややこしく、ビジネスマンの間でも十分理解されていない嫌いがある。しかし、企業の資産では大きな比重を占める在庫の評価方法であり、基本的な考え方は理解して置くべきだ。
これまでの日本の会計基準の原則は原価法で、所有する在庫は取得原価額がそのまま計上されてきた。これに対して、国際基準では在庫価値の変動を財務諸表に反映させるべく、各期末にすべての在庫価値の再評価を行ない、価値が減じている場合には評価損を計上することを義務付けている。
技術革新や競合、消費者の嗜好の変化が激しい現代では、素材や商品を購入してからその販売が完了するまでの間にそれらの公正価値が変動する可能性が高い。
日本の方式では、その減額分は販売が完了した段階で期待利益の減や、時には赤字販売として明るみにされるが、国際基準では在庫期間中にもその変動を把握して開示することを求めている。貸借対照表を重視したより厳格な保守主義に準拠しているといえよう。
この国際基準は「低価法」と訳されている。日本語の特徴で数語に凝縮しないと専門用語として通用しないことからこの訳語が使われているが、原語は「Lower-of-Cost-or-Market Method」で、懇切丁寧に何と何を比べて低い方を採用すると解説が挿入されている。
棚卸資産の原価(Cost)と時価(Market)とを比べ、どちらか低い方を採用するのだが、時価とは基本的には再調達時価(Current replacement cost)を指す。注意すべきは、この時価に上限と下限を設けていることで、時価とは次の3種類になる。
(1)再調達時価(Current replacement cost)通常の仕入や生産を前提とした場合の時価。
(2)正味売却価額(Net realizable value)販売によって得られる予想収益から販売に必要な経費、例えば販売要員の人件費、代理店手数料、梱包費などを差引いた額。即ち、翌期に販売した際に売上利益がゼロとなる価額を指す。これを時価の上限とする。
(3)正味売却価額から正常な売上総利益を差引いた額(Net realizable value reduced by normal profit margin)。その会社の過去の実績から算出される平均売上総利益率を実現するであろうと期待できる価額で、これを時価の下限とする。
この3種類の数字を比較して時価を選択し、その数字と原価とを更に比較して、どちらか低い値を評価額とする。
単純化した実例を下記に示してみる。
商品 A B C D
販売価格 80 80 80 80
販売に必要な経費 10 10 10 10
(1)再調達時価 55 55 72 65
(2)正味売却価額(上限) 70 70 70 70
(3)正常な総利益を引いた額(下限) 60 60 60 60
(4)取得原価 45 65 71 68
(5)低価法による評価額 45 60 70 65
適用 取得原価 下限 上限 再調達
以上の例からお判りの通り、低価法は評価する当事者の「予想」の設定に大きく影響される。果たして棚卸資産の価値をどこまで客観的に明らかにできるか疑問だとの批判があるのはそのためだ。
また、棚卸資産は、原材料、仕掛品、完成品在庫と広範囲に及び、これをすべてのアイテムに渡って各期末毎に見直しすることは大変な力仕事が伴い、かなりの労力と経費が掛かることになる。
日本の優れた在庫管理手法であるジャストインタイム・システムでは在庫は常に最小必要限で、自動車産業などでは総在庫額が仕掛品を含めても数日分のような例もあり、在庫をタップリ持つ旧式の経営を前提とした時代遅れの手法と非難する向きもある。
更に、会計学の理論面からも、この低価法によって期間利益が平準化されてしまう結果、企業の収益性を長期的に分析する上で欠かせない損益計算書が実態を正しく表示せず、会計原則に矛盾すると指摘する専門家もいる。貸借対照表を重視し過ぎることが、損益計算書の役割を阻害する結果となっているとも考えられる。
しかし、国際基準ではこれを義務付けていて有無を言わさぬ状態にあり、企業経営者は避けて通れない。冒頭に記したように、美人の才女でさえこれを話題にせざるを得なくなっているのだ。
以上
日時: 2008年01月18日 11:56 | パーマリンク
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